総理の器と民意<本澤二郎の「日本の風景」(4592)
総理の器と民意<本澤二郎の「日本の風景」(4592)
<息子を秘書官にした岸田文雄の孤立無縁の「聞く耳」新作戦>
昨夜は若くして永田町の革新政党に身を置いた政治家、少なくとも売国奴の清和会と全く異なった人物と長電話を楽しんだ。当選した年齢は30代前半。当時を振り返って「世の中のことなど何も分からなかった」と。これは事実であろう。筆者はそのころ、政界随一の政治家で、日本敗戦時から外交、特に日米外交に直接関係を持ってきた宏池会の宮澤喜一の門を叩いたころだ。
岸信介が強行した60年安保さえ、その内実を知らなかった。若さの特権というと、無知の二字で片づけられる。いまはこの程度の無知の人が、バッジを多数つけている。もうそれだけで政治の劣化を裏付けているのだが、要するに岸田が批判を覚悟して31歳の息子を秘書官に起用した理由は、誰も口にしないが「民意は何なのか、自分で判断する。そのためだ」ということが、ようやく理解出来てきた。
ということは、孤立無縁の官邸の主なのだ。信頼できる側近がいない、裸の王様ということになろうか。要するに、さまざまな世の動きをつぶさに報告しろ、が、岸田の本意だろう。「民意を自分でつかむ」との決意の現れか?
<宏池会を創立した池田勇人の耳学問>
大半の国民は保守本流という言葉も知らないため、当たり前のように書くと、ほとんど理解してくれない。政治教育がゼロの日本の戦後だからだ。要は、戦前の悪しき歴史の教訓を踏まえて実現した民主主義の日本国憲法を、民意と判断して制定し、政権を担当した吉田茂の政治勢力のことを指す。現に日本国憲法は全政党の賛成で誕生した。この一点にケチをつけるのが、戦前派の極右の面々である。
彼らは日本軍国主義に染まって、侵略戦争に加担した戦前の戦犯派(岸信介や鳩山一郎ら)の勢力であるため、保守傍流と呼んで区別した。こちらは戦争放棄の憲法9条を敵視する極右勢力で知られる。現在の福田・安倍の清和会だ。筆者が批判する理由である。平和を愛する国民は、この岸・福田・安倍の保守の傍流政治を拒絶することになる。
宏池会の池田勇人は、したがって民意を重視した。それを知るために多くの人々の声に耳を傾けた。これが彼の「耳学問」である。岸田の「聞く耳」とは、この池田の政治姿勢をみづからも実践する、との意気込みがあったものだといえる。動く民意と動かない民意の後者は、戦争を二度と起こしてはならない、にある。武器弾薬を持つと、どうしても戦争を起こす。
やくざを見れば一目瞭然である。武器で身を固めるやくざは、年中争いごとにうつつを抜かす。世界の指導者のなかにはやくざレベルが少なくない。それを否定した日本国憲法は、それ故に世界の宝なのだ。宏池会の政治姿勢は、軍事に肩入れしないという点で、もっともまともな政治勢力である。敵を作らない、作ってはならない国際協調主義を原則にしている。実にすばらしい憲法の立憲主義を貫徹した保守本流だったといえる。
だが、岸田の「聞く耳」は失敗した。安倍国葬を閣議決定したというお粗末さは、後世に残る。実に無様な選択だった。官邸機能の崩壊を意味する。岸田の側近は、清和会と統一教会にまみれていたのである。
<大平正芳の「決断は自分がする」と繰り返し側近に厳命>
首相官邸の主は、もともと孤立している。あれこれ妄想も頭を横切る。武器は使わないが、斬ったハッタの世界だ。民意は側近ではなく、自ら決断する。そのため、側近の結論に蓋をかけるしかない。
これが大平流である。大平は「君らは勝手に結論を持ってくるな。判断は自分でする」と繰り返し側近に指示していた。
首相の判断一つで国民生活が危険にさらされたりするものだ。その責任は重い。その重さに押しつぶされることもある。
田中角栄は、50年前の日中国交正常化のさい、覚悟の訪中を決行した。盟友・大平正芳との固い約束を果たしたのだが、この時、娘の真紀子を随行させなかった。岸ら台湾派の決死の抵抗が予想された。それは北京でも。しかし、民意は国交正常化だった。
大平外相は、1979年12月の首相となっての訪中で、中国へODA支援を約束し、中国経済は見事に立ち上がった。世界最大の消費大国ともなった。侵略戦争加害国としての責任の一端を果たしたことを、日本国民は銘記するとよい。これも民意だった。A級戦犯派閥・清和会は、その逆の航路を突っ走った。今も統一教会と共に反撃を続けてきたのだが。
<「統一教会解散命令は100%民意」>
10月11日に全国霊感商法対策弁護士連絡会は、統一教会を解散するよう申し入れを、文科相や法相らに行った。これこそが民意である。安倍国葬強行で大失敗した岸田内閣にとって、汚名挽回の好機をつかんだと受け止めようと思う。売国奴派閥に対して「聞く耳」をもつ必要はない。
民意に従うべきである。一刻も猶予すべきではないだろう。警察・検察を動かせば、一日もあれば事足りるだろう。
2022年10月12日記(政治評論家・日本記者クラブ会員)
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