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2019年11月 4日 (月)

5・15事件と天皇責任<本澤二郎の「日本の風景」(3486)

 

515事件と天皇責任<本澤二郎の「日本の風景」(3486)

<犬養毅首相=満州国承認に抵抗=軍閥+昭和天皇=暗殺>

 数日前の毎日新聞の記事を読んだという友人が「515事件の責任は軍部だけでなく天皇の責任だ、知らなかった」と連絡してきた。ようやく立ち上がった政党政治を消滅させた515事件の黒幕は昭和天皇である、というのだ。近現代史に蓋をかけてきた日本政府の闇を暴くような本の紹介であるとも。筆者も含めて5・15で暗殺された犬養首相のことを、さらっと歴史で学んでいるが、暗殺原因を追及しようという姿勢はなかった。

 

 当時の関東軍が暴走に次ぐ暴走で、ついに中国・東北地方に「満州国」なる関東軍の傀儡政権が。これに時の犬養は反対した。天皇にも伝えた。これに天皇と軍閥が連携した犬養暗殺の可能性が強い。武器による犬養排除である。

 

<「狼と義」という本を開くと見えてくる>

 今の岡山県出身の犬養は、慶應義塾や二松学舎で学んだ後、西南戦争を記者として取材している。「日本及日本人」という雑誌では、財閥と軍閥を批判するリベラルなジャーナリストだった。1890年から42年間、実に18回、連続して衆議院当選の実績を残している。その記録は、尾崎行雄に次ぐ。

 

 神戸中華同文学校、横浜山手中華学校の名誉校長を引き受けている。大の中国派は、孫文の革命派の支援にも力を入れた。おそらく「狼と義」という本も、こうした彼の政治思想を取り上げているはずだ。

 

 政党政治が衰退する場面で、立憲政友会の総裁にかつがられて政権を担当するのだが、彼の政治基盤は弱かった。財閥と軍閥の侵略派が主導権を握る中で、苦しい妥協政治を強いられる。

 

 だが、武力で大陸・中国を制圧する関東軍と、そこから大陸の資材を収奪する財閥の暴走を容認することはできなかった。この間の天皇とのやり取りは、まさに現人神ゆえか、すべての記述から読み取ることはできない。

 

 ただし、5・15反乱兵士の処罰が軽微であるところから、天皇関与を推認することができる。「狼と義」がどこまで踏み込んでいるか?

 彼は対話・話し合いによる解決のため、密使を派遣するのだが、辛亥革命後の中国は、軍閥が跋扈する大混乱期である。蒋介石の国民党も北伐に成功していなかった。他方で、関東軍は東北軍閥の張作霖と提携しながらも、日本財閥が牛耳る大豆利権に手を出したことを知ると、鉄道を爆破して暗殺してしまう。

 「満州国傀儡政権」を発足させたものの、犬養政権はこれを容認しない。事件はそうして起きたのだが、反乱軍は陸軍ではなく、海軍である。ここに反乱軍の陰謀の巧妙さを見て取れる。

 

<閨閥で動く日本=緒方貞子さん(92歳)の曽祖父>

 今なぜ515事件と天皇責任かといえば、最近亡くなった国連高等弁務官を歴任した緒方貞子さんの曽祖父が犬養首相だったことと関係する。

 

 思うに、安倍や麻生に限らず、日本の政治経済などが明治の閨閥で動いてきていることに、改めて感じさせられる。庶民大衆が頂点に立つことは容易ではない。たとえ立っても、すぐに排除される。当時の犬養もそんな立場だった。いうことを聞かないと、武器弾薬でもって退治してしまうのだ。

 

 犬養家は、戦後の時代で芽を出したのだが、健は造船疑獄時の法務大臣として、詰め腹を切らされてしまった。外交官の娘である貞子さんは、吉田茂後継者の緒方竹虎の息子と結婚、閨閥の一角に組み込まれて、国際社会で活躍した。

 彼女は「満州事変」という本を書いている。犬養の信念も、ここで描いているかもしれない。5・15の後、2・26事件が起きている。こちらには厳罰、すなわち天皇も容認できなかった、という事件だったことがわかる。

 

 「昭和天皇は侵略戦争に関与していなかった」という天皇教の皇国史観をただす必要があろう。その機会を、今回は緒方貞子さんがくれた。近現代史を学ばない日本人は、国際社会では通用しない、ということを学ばせてくれる。

 

 犬養の言い分に「極端な右、左はダメ」がある。現在の安倍・自公政治は、極端な右だから、隣国との関係を壊してしまい、本日、タイでの日韓首脳会談11分とさえなかった。

2019114日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)

 

 

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